昭和57年11月29,30日に関係各機関に出された陳情書

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昭和57年11月29,30日に関係各機関に出された陳情書


「国鉄松前線の存続に関する陳情書」

                           北海道松前郡松前町
                           北海道松前郡福島町
                           北海道上磯郡知内町
                          北海道上磯郡木古内町

 陳情書

 本地域は北海道最南端に位置し、本道では最も古くから開かれたところで、松
前城をはじめ歴史的遺産に富み、また広大な未開発の森林資源や水産物が豊富で
あり、その供給地としての役割も担っております。
 さらには、青函トンネル北海道側工事基地や臨海火力発電所の建設など着々と
発展の途上にある地域であります。
 よって、公共輸送の基幹をなす国鉄に大きな依存をしている現状でありますの
で、国鉄松前線の存続に関し、別添のとおり陳情いたしますのでよろしくお願い
申し上げます。

 昭和五七年一一月二九日

                  北海道松前郡松前町長 坂 本 富 雄
               北海道松前郡松前町議会議長 岩 崎 福 蔵
                  北海道松前郡福島町長 深 山 久三郎
               北海道松前郡福島町議会議長 蝶 野 東 郷
                  北海道上磯郡知内町長 大 野 重 樹
               北海道上磯郡知内町議会議長 林   雅 雄
                 北海道上磯郡木古内町長 小 島 義 三
              北海道上磯郡木古内町議会議長 西 山 兼 松

    要旨

  国鉄松前線の存続について

 政府におかれては、国鉄再建のため一○項目に亘る当面の緊急対策に取り組む
こととされましたが、このうち「地方交通線の整理促進」は、地域の特殊事情を無
視した画一的手段であると憂慮いたします。
 第二次廃止対象となっている松前線については、国鉄の運輸大臣への承認申請
が一一月二二日に提出されたところでありますが、北海道における第一次線につ
いては、ようやく協議会を開催した段階にあり、この帰すうが明確でない現状に
あって、更に第二次線の選定を進めることは、地域に多大な混乱を招くものであ
り、誠に遺憾に堪えず、松前線の廃止には絶対反対するものであります。
 よって、第二次線の選定については見合わせるとともに、全国画一の基準で進
めることなく、政令交付後の路線の輸送実態と地域の特殊性等を適確に把握し、
政令の改正等、実情に即した措置を図られるようお願い致します。
 つきましては、国鉄松前線の、北海道における重要な役割を深くご理解され、
存続については特段のご配慮を賜りますよう強く要望申し上げます。

    記

一、松前線地域の特殊事情

 (一)北海道観光の要衝地(松前町)
    松前町は、道内では唯一の城のある城下町であり、花見時期を中心とし
    て、年間四八万人もの入込み観光客があります。
    北海道観光の表玄関としての要衝地でもあり、観光客の多くは列車輸送
    に頼っている現状にあります。

 (二)青函トンネル工事基地(福島町)
    福島町は昭和三九年工事着工以来、青函トンネル工事基地として資材運
    搬や工事関係者の往来も頻繁であります。
    また、知内〜木古内間の陸上部アプローチ線工事が一一月一九日に開始
    されるなど、青函トンネル関連工事施行途中での松前線廃止は、トンネ
    ル完成時期への影響が甚大であるとともに、北海道発展計画を阻害する
    要因にもつながるものであります。

 (三)知内火力発電所の建設地(知内町)
    知内町は、火力発電所の建設地であり、現在、昭和五八年の完成に向け
    て一号機が建設中で、続いて二号機(昭和六一年完成予定)の建設に取り
    掛かる計画にあります。
    国内エネルギー需要は急激に増加している中、国鉄等公共機関の廃止は
    火発建設計画に大きなマイナスとなることは明らかであります。

二、松前線利用実態の特殊性

    松前線利用乗客は函館を基点としており、五稜郭〜木古内までは江差線
    と重複していることから途中までは江差線乗客として取り扱われており
    ます。
    利用実態状は、松前線上から函館までが生活路線として利用されており
    、江差・松前線は切り離すことのできない一体化のものであります。

三、政令の改正について

    現政令(国鉄再建法施行令)上の基準期間は昭和五二〜五四年の三カ年で
    ありますが、選定時において過去の実績を適用することは、現時点にお
    ける輸送実態に即さないものであります。よって基準期間は直近三カ年
    と改正することが妥当と考えられ、強く要望致します。
    尚、松前線の輸送実績は別葉のとおりであります。

<資料1>
地方交通線輸送実績調(松前線五○.八キロメートル)

年度 年間旅客
輸送人員
旅客輸送
密度
一人平均
乗車距離
収入 経費 損益 収支係数 備考
52(A) 738,084 1,515 29.3 221 1,344 ▲1,123 608  
53(B) 656,868 1,370 29.7 229 1,502 ▲1,273 655  
54(C) 614,005 1,311 30.2 255 1,501 ▲1,246 589  
55(D) 574,370 1,274 31.3 255 1,436 ▲1,181 562  
56(E) 533,055 1,160 30.0 232 1,666 ▲1,434 719  
  キロメートル 百万円 百万円 百万円  

 ○廃止対象路線から除外される条件
  「平均乗車距離が三○キロメートルを超え、かつ、輸送密度が一,○○○人
  以上」のものは除かれる。
  (日本国有鉄道経営再建促進特別措置法施行令、第三条第四項による。)
  =五六・三・一一・政令第二五号

 ○松前線の場合

    旅客輸送
密度
一人平均
乗車距離
 
1 52,53,54年度の平均 1,389 29.8 現政令の基準期間上、三○キ
ロメートル未満のため廃止対
象となっている。
2 53,54,55年度の平均 1,318 30.4 このことから二,三の場合は、
上記の条件が適用され、廃止
対象路線から除外される。
3 54,55,56年度の平均 1,248 30.5
基準期間 キロメートル    

<資料2>
国鉄利用者の市町村間流動(昭和六五年推定)
 運輸省札幌陸運局資料(昭和五七年二月発行)(単位・・人/日)

函 館←→五稜郭 18272
五稜郭←→上 磯  9331
上 磯←→木古内  3674
木古内←→知 内  1553
知 内←→福 島  1133
福 島←→松 前  689
木古内←→上ノ国  490
上ノ国←→江 差  776
(注1)

<資料3>
一、松前線の旅客輸送実態
  (一)普通旅客輸送人員(昭和五六年度)五三二,○五五人
  (二)医療、教育関連輸送人員(昭和五七年度=一○月末迄)
     ・一日平均通院者 二一八人
     ・一日平均通学者 五七三人
     (中学生六四人、高校生五○九人)

  バス転換想定の場合の問題点
  (医療面)
   乗車時間、バス内部施設の不備など傷病者に与える苦痛は極めて大きく、
   函館市内の総合病院への通院は不可能となる。
   冬季間は特に困惑の度を増すことになり、生命にかかわる問題にも発展し
   かねないものがある。
  (教育面)
   通学生徒の人数からみて、通学時間帯に全員を輸送できうるバス台数の運
   行が物理的に不可能である。また、函館方面への通学は時間的に不可能と
   なり、下宿生活を余儀なくされ、教育費の負担増が著しくなるため、高校
   選択の歪が生ずる。さらに、冬季間は除雪作業が始業時までに間に合わな
   い等、通学上に来す支障は計り知れないものがある。

二、昭和五四年度〜五六年度(三カ年平均)における江差・松前線の内容

  営業距離 旅客輸送密度(人/日・キロメートル) 一日平均乗車距離
江差線 79.9 2,166
(うち、松前線上への乗車率63%)
25.2
松前線 50.8 1,248 30.5
  キロメートル キロメートル

 松前線は、木古内〜松前間であるが、通学。通院、商用等、生活利用上では函
 館までの実態となっている。よって、江差線とは一体化しているとともに、当
 該路線の輸送密度向上に貢献している状態にある

三、昭和五五年江差・松前線区間別輸送力と乗車率(一日当たり)

  区間 列車本数 輸送力(人) 輸送量(人) 指数 乗車効率
江差線 函 館〜上 磯 27 9,155 7,811 68 85
上 磯〜木古内 24 8,370 4,778 67 57
木古内〜江 差 15 2,570 1,338 62 52
松前線 木古内〜松 前 15 3,375 2,162 78 64

        (昭和五七年二月 運輸省札幌陸運局資料。指数は四○年比)

注1:本来は長万部以南の道内全路線を図と凡例ともに数値を示しているが、図
   を転載出来ないため、関連区間のみ数値だけ掲載した。


松前町史通説編第二巻 P1450

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